不眠と女性と鍼灸治療の成果

毎日よく眠れない、寝つきが悪い、途中で目が覚める、早朝に目が覚めてしまう―不眠の症状はさまざまです。

睡眠不足は、不安・倦怠感・記憶力低下といった日中の活動の多くの側面に影響を与え、高血圧といった健康面のみならず、生活の質の低下にもつながります。

特に女性は、月経や更年期に伴う症状として不眠症が出現しやすい傾向があります。

全世界の人口の15-30%が悩まされている不眠に対する治療には心理療法・薬物療法・運動療法などが代表的ですが、鍼灸治療はどのような効果を上げているのでしょうか?

  • 不眠の原因

悩みがあって寝付けない、寝る前のスマホで目が覚めてしまった、とういう経験をしたことはありませんか?

たとえ悩みの自覚はなくても、私たちの身体は常に情報化・24時間化・IT化にさらされており、無意識のうちに頭への刺激が過剰になっていることもあります。

東洋医学では、精神的な不安(⇒心臓や頭など胸から上の身体の部分)、寝る前まで頭を使ったこと等により引き起こされる「熱が頭に昇っている」状態を、不眠のひとつの原因ととらえます。

これを身体の上下で比較した場合、全身的な寒熱のアンバランスを「上熱下寒」と呼ぶことができます。「冷えのぼせ」ということもあります。いずれにせよ不眠は全身的なバランスを欠いた結果現れる症状なのです。

2.鍼灸って不眠に効果があるの?

一般にはあまり知られていませんが、鍼灸治療は不眠にも効果的であることが、古くからの書物に記されています。また近年では、不眠に対する鍼灸の効果についての科学的な臨床研究が国内外[1]で行われています。

たとえば国内では、頭の血流改善に効果が期待できる足のツボに鍼を用いた臨床研究[2]、セルフケアとして手足のツボに台座型のお灸(イメージ1、2参照)をすえた臨床研究[3]で、鍼灸の不眠に対する効果が確認されています。

特に後者は、お灸が手足の皮膚温度を上げ、また自律神経の調整により放熱し、深部体温の低下、ひいては夜間の覚醒回数の減少につながったと考察しています。

 

<イメージ1.台座灸>

 

<イメージ2.セルフケアのお灸>

3.鍼灸治療 そのメリットとデメリットとは、、、

メリット

鍼灸治療のメリットと考えられることは3点あります;

  • 安全で副作用がほとんどない

副作用としてまれに鍼あたり・灸あたりで翌日くらいに倦怠感が生じることがありますが、2-3日で落ち着きます。これは刺激量を加減することで調節は可能です。

  • 慣れれば、セルフケアに移行できる

お灸には自宅でできるセルフケア製品がいくつかあります(煙の出ないタイプ等)。

はじめは国家資格を持った鍼灸師を受診し、身体が慣れれば、鍼灸師から指導を受けることで、安全で正しい方法による、自宅でのセルフケアも可能となります。

  • 自律神経の調整により、他のメリットも同時に期待できる

血圧、消化、排尿排便など、自律神経を整えることで幅広く改善できる可能性があります。

デメリット

デメリットは下記と考えられます。

時間がかかる

身体のもともと持っている仕組みを利用しているので、身体が反応・変化し慣れていくのに3~8週間ほど時間がかかります。これには元々の症状の程度などにより、個人差があります。

まとめ

不眠のような慢性症状に対して鍼灸治療を始める際には、なるべくあせらず気持ちに余裕を持ち、ご自身の身体の自己治癒力を信じて

:一定期間通えるリーズナブルな価格設定

:通いやすい場所にある、通いやすい時間帯に施術を受けられる

:良心的で信用できる鍼灸院

を客観的に選ぶことが大切です。


[1] Zhang I “Effectiveness and safety of acupuncture for insomnia: Protocol for systematic review” Medicine (Baltimore), 2019 Nov., 98(45)

[2] 中村ほか「女性の不眠症に対する鍼灸治療の効果」2018年11月「女性心身医学」Vol23, No2, P89-95

[3] 鍋田ほか「温灸を用いた灸セルフケアが夜間覚醒回数に与えた影響」2015年「全日本鍼灸学会誌」Vol67, 15-22

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